建設事業の40%程度が公共物件であるイギリスは、BIMの先進国です。BIMモデルが2004年にアメリカで発表されてから、独自の調査・研究が進み、2009年にはBIMのガイドラインとして「AEC(UK)BIM Protocol」を取り纏められ、
数年毎に更新がなされています。
そして2011年5月には、イギリス内閣府が公共部門の資産コストを2016年までに最大20パーセント削減することを目標とした「Government Construction Strategy(建設産業政策)」を発表し、
「内閣府は、政府がサプライチェーンの全メンバーがBIMによって協働的に働くことを可能とするための標準開発を行うよう勧告し、2016年までには完全に協働的な3DBIMの実現を要求する」と述べました。
これが実質的に、イギリスでの政府事業に関するBIMの義務化宣言と言われています。
2013年には、「Government Construction Strategy(建設産業政策)」を補足した、2025年までの目標を定めた「Construction2025」を発表するなどして現実的にイギリスは動き始め、
BIMのガイドラインを頻繁に更新し、BIMの進展に努めています。
イギリスは独自の指標として、「BIS BIM Strategy Report」の中で、BIM成熟レベルの設定を行っています。その内容は以下の通りです。
Level 0: 紙面のフォーマットでやりとりされる、管理されていない2次元形式のCAD図面。
Level 1: 協働のためのツールを備えた2次元あるいは3次元形式のCAD図面。標準化されたデータ構造/形式のような共通のデータ環境を提供するコラボレーションツールを持つ。ただし、商業的なデータは資金調達とコストマネージメントのパッケージによって独立に扱われ、CADとの統合はなされていない。
Level 2: 別々の専門的BIMツールによって構成され管理された3次元CAD環境。統合は専用のインタフェースやミドルウェアをしつらえることによってなされる。
Level 3: 互換性のあるフォーマットによる完全にオープンなプロセス及びデータの統合。サーバー上の管理されたモデルを使用し、同時発生的なエンジニアリングを可能にする。
また、2016年でにイギリスのBIMレベルをLevel2かそれ以上に導くため、若い建築家やエンジニアによって「BIM2050」が組織されています。
以上のように、イギリスは野心的なBIM戦略を行っています。BIMは国内のみならず国外の商圏において経済成長の鍵となる要素であり、イギリスがBIMをリードすることで、人材の国際競争力を高めることをも意図しています。
2009年:AEC(UK)BIM Protocolが編纂され、イギリスにおけるBIMガイドラインを公表。
2011年:内閣府が2016年までの政府事業におけるBIMの義務化宣言を行う。
2012年:AEC(UK)BIM Protocol ver2が公開される。
2012年:法務省が施設設備にBIMを導入するプロジェクトをスタート。
2013年:2025年までの目標を定めた「Construction2025」を発表。
2014年:AEC(UK)BIM Protocol ver4が公開される。