日本のBIMは諸外国に比べて進展が遅く、BIMの発祥国であるアメリカが2007年にガイドラインを公表した年に「BIM」という概念が輸入され、BIMに関するセミナーが開催され始めます。
それから二年後の2009年にはBIMに関する書籍が発売されると。建築分野を中心にBIMの機運が高まり、BIMの導入が一部で活発化したことから、2009年が「日本のBIM元年」と呼ばれるようになりました。
BIM元年の翌年には、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言し、アメリカから7年遅れの2014年に「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」が公表されました。
日本の建築業界の施工技術は世界的にみても高く、設計者と施行者が契約で結ばれている海外とは異なり、法的契約を超えた「信頼」で繋がっている面があります。
しかし、その反面としてシステム化が遅れており、世界的なBIMの潮流に乗り遅れていることも否めません。
BIMの導入には幾つかの問題があります。一つとして、ソフトの問題です。BIMソフトには様々なものがありますが基本構造は同じであり、用途や素材などの属性を持ったパーツを、ソフトの中で組み立てていくことが求められます。
これは従来の、線を描いて図面を作成する二次元CADとは異なった方法論となります。
図面を作成する場合は、BIMで作った三次元モデルから切り出して二次元CADで加筆、修正するといった形となり、図面はBIMにおいては副産物となります。
続いての問題が、設計手順や考え方、組織の問題です。
BIMで中心となるのは、三次モデルを作成する設計部門となります。設計部門が作成した三次元モデルから各部門にデータが展開されることから、設計部門では正確なモデル作りを行うことが求められるとと共に、データを引き渡す際のルールを制定することも必要となります。
このように、BIMで設計することは社内の仕事の流れやルールなどを変更する必要があり、従来の方法論で問題なく業務を行えていた日本企業では、BIMを導入することに意義を見い出せないという声があることも事実です。
しかし、意匠、設備、構造、のみならず積算までをも一括して行えるBIMモデルは、生産年齢人口が減少し、業務に効率化が求められる建築分野では今後、間違いなく重要になってくるモデルです。
今はよくても、その今が永続的に続く訳ではありません。日本のBIMは日本の建築業界が世界から取り残されない為に、ひいては人口減少を迎えてしまった日本での効率改善の為に、なくてはならないツールです。
2007年:アメリカのBIMガイドライン公表に伴い「BIM」の概念が日本に輸入。
2009年:BIM関連の書籍が発売し、一部でBIMの導入が活発化し「日本におけるBIM元年」と呼ばれる。
2009年:48時間でBIMの完成度を競うBuild Live Tokyo2009が開催。
(最優秀賞:前田建設工業)
2009年:48時間でBIMの完成度を競うBuild Live Tokyo2009 Part2が開催。
(最優秀賞:清水建設)
2010年:国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言。
2010年:48時間でBIMの完成度を競うBuild Live Tokyo2010が開催。
(最優秀賞:大林組・芝浦工業大学)
2011年:48時間でBIMの完成度を競うBuild Live Kobe2011が開催。
(最優秀賞:芝浦工業大学)
2012年:48時間でBIMの完成度を競うBuild Live CHIBA2012が開催。
(最優秀賞:大林組)
2014年:国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」を公表。
2016年10月、高知県の南西部にある総人口6500人程度の「中土佐町」の新庁舎設計のプロポーザル(提案)が、BIMによる条件で開催され、話題を呼びました。
中土佐町の町役場庁舎は南海トラフの巨大地震が発生した場合、津波や長期水害の被害を受ける可能性があり、高台への移転建て替えが検討されています。
そうした中、新庁舎本体の基本設計業務と合わせ、駐車場、侵入道路などの他、斜面補強対策や学校校庭の改造など、付帯工事の基本設計が求められました。
日本で、それも町役場の基本設計でBIMモデルが条件として求められるのは初のことで、大きな注目を集めました。
審査の結果、「梓設計」が最優秀賞に選ばれ、付帯工事を含んだ建設予算規模20億円以内の業務とし、2020年の完成を目指して計画が進められています。
〇中土佐町新庁舎建設基本設計業務プロポーザルについて
〇中土佐町新庁舎建設基本設計委託業務 特記仕様書(案)
尚、設計業務のうち、一般業務は国土交通省の官庁営繕事業に使用されるBIMガイドラインに準拠して行われる他、追加業務として風環境や熱環境、光環境などのシュミレーションが求められ、
ライフサイクルコストの評価も行われる、BIMモデルとしては骨太な設計業務となっています。